恋愛寫眞

市川拓司の文。
 
「誰かがそばにいることの良さは」
「こうやって手の届かないところを掻いてもらえることかもしれないね」
「現実的にも比喩的にも?」
「うん」
 
誰かがそばにいることの良さなんてその程度のことなのかもしれない。
けど、この感覚が心地良いのかもしれないね。
痒いところを掻いてもらうみたいに。
 
「優しくしないで―いじめないで」
 
例えば僕は男だからこの物語に出てくる誠人に自分を投影して
考える。感じる。
しかし女性が読んだら静流、あるいはみゆきに自らを投影するのだろうか。
 
「世界がもっと単純ならいいのに」
「私はあの人が好き。それだけで成り立つなら、すごく簡単なことなのに」
「片思いの惑星?」
「そう」
 
ぼくは愚かな男だったけど、「失った後で気付いた」と言うほど
愚かしくはなかった。自分の気持ちには気付いていた。
ただ、どうすればいいのか分からなかったのだ。
 
「恋をすると死んでしまう」
恋をしなければ生きてはゆけない
 
ひどく切ない嘘
 
この本に出逢えたfluke
 
別れはいつだって思いよりも先に来る。
それでもみんな微笑みながら言うの。
さよなら、またいつか会いましょう。
さよなら、またどこかで、って。
 
たしかに
 
幸せな片思い。